実は孤独になればなるほど頭が良くなる
孤独は悪いこととされてきたが、実は学問を極めた人ほど孤独であり、自身の能力を最大限に発揮する良い環境だった。
人間は孤独に耐えられない
スーパーマーケットで母親とはぐれた小さな子供が、「ママー、ママー」と言って泣きながら親を探す姿を、私は目にしたことがある。
この子どもの泣く行為は集団欲(群れの中に属したいという欲求)の現れである。なぜ、人間は集団欲を持つのか?
集団欲を持たなければ死につながるからだ。
例えば、草原でライオンの子どもが集団欲を持っていなければ、親ライオンから離れるため、チーターなどの外敵から食べられる確率が急激に上がる。
ライオンの子どものように、孤独になると死につながるため、脳は孤独になると身体や精神に大きなダメージを与える。その結果、人間は集団の中へ必ず入ろうとする。
子どもが親を見つけられずに泣いている行為は、いかに精神的ダメージが大きいのかを物語っている。
よって、私たち人間に備わっている集団欲は生きていく上で絶対に必要な欲求である。つまり、人間は孤独には耐えられないのだ。
集団欲がない人は病気?
集団欲が無ければ生きられない、と述べたが、私たちの身近に孤独に耐えられる人間がいる。かつて、私の身近に全く人と関わらない同級生がいたが、私にはその人が自ら孤独を楽しんでいるように見えた。
なぜ、孤独に耐えられるのか?答えは以下の理由によるものである。
- 精神障害
- 発達障害
- 知的障害
- 病気により孤立して生きてきた人
- 経済的事情により孤立して生きてきた人
- 差別により孤立して生きてきた人
1~3(または1~4)は生まれつきの病気、4~6は環境によるものである。1~6の人は病気のため、または強い精神力のおかげで孤独でも生きていけるし、孤独に耐えるために相当な苦労をしている。
例えば対人恐怖症や解離性人格障害のように、精神障害や発達障害などに他者との交流を嫌う病気があるが、孤独でも生きていけるのは病気や精神力によるものだ。
ただ、一般人でも少しの孤独なら耐えれる。それは軽度の障害や病気を持っている場合や精神力が強い場合である。軽度の精神障害や発達障害の場合、親や周囲が気づかずに、子供は大人まで成長することがよくある。また、本人も自覚症状を感じずに生きることができる。
自ら孤独になる人
サイエンスライターの吉成真由美氏(ノーベル生理学・医学賞の受賞者である利根川進氏の妻)の著書「危険な脳はこうして作られる」によると、
人間の脳は次の2つのことを欲するようだ。
- 人生の最初にその存在を肯定されること
- 適度に他の脳と関わり合うこと
楽しんで孤独になる人もいれば、苦しみながら孤独になる人もいる。
楽しんで孤独になる人は周囲から愛されていることを実感したり、他者を愛したり共感する場合である。例えば本書では、孤独でも寂しいと感じない学者について次のように紹介されている。
学問を極めれば極める程、理解できる人間が減って、人間は孤独になる。
(中略)
しかし、普通に「寂しい」という感情には直結しない。何故なら、人間は理解者がいれば(生身の人間でなくとも過去の人物の書物や論文を読んで)、それでほぼ十分やっていける。また、十分に寂しさから解放され得るから。
ブノワ・マンデルブロいわく「自分は一ヶ月一切誰とも口を聞かずに過ごしたことが時々ある。それでも全く孤独に感じたことはない。過去の論文に目を通すと、必ず自分と同じような脳の持ち主を発見できて、十分な満足が得られるからだ。」
他者を嫌って孤独になる人
反対に、苦しみながら孤独になる人もたくさんいる。
著者の言うように、学問を極めれば極める程、理解できる人間が減って人間は孤独になる。また、学業や仕事の成績が優秀であればプライドが高くなる。
プライドを傷つけたくないため、感情に厚着をすることによって自らを孤独に追いやっていく。本心では集団に入りたくても、同時に苦しみを味わうため、他者との関わりを避けようとするのだ。
また、自分は他者より優れていると誇大妄想し、他の劣等者たちと関わることは自分の価値を下げると考える。孤立した自らの状態を肯定化し、ますます孤立状態へと進んでいくのだ。
だが、人から認められたいという欲求は残っており、富や名声に固執する。このような形で孤独になる人は、苦しんで孤独になる典型的パターンである。
結論:孤独は最大の力になる
世間では、「友だちが多いことは良いことだ」「1人ぼっちは悪だ」という意見をよく聞く。なぜ、その意見が賛同を得るかと言うと、一般人は孤独が怖いからである。
孤独の良さを知っている知識人は、自ら望んで他者との関わりを絶とうとする。孤独になると他者と関わらないため、自らの特性を最大限に発揮するからだ。
孤独は決して害ではなく、自分の価値を高めるために必要な環境である。