年功序列と成果主義と年配者優遇、それぞれの未来
経営危機と経営回復を繰り返せば、年功序列と成果主義では、若者が多く年配者が少ない労働環境となる。一方、日本の大部分を占める年配者優遇の労働環境では若者の給与や待遇は低いままで、非正規雇用が増えていく。
成果主義の未来:若者が多く、年配者が少ない
成果主義では、年齢に関係なく能力のある者が優遇される。
「10年後に食える仕事、食えない仕事」の著者・渡邉正裕氏は、日本の大部分の仕事は高度な専門技術を使わない非技能職である、と指摘している。現に、あらゆる仕事がアルバイトやパート、派遣でまかなえるのは、高度な専門技術が必要な仕事だからだ。
成果主義では体力がある若者ほど優遇されやすく、経営危機の際は、下の図のように年配者ほどリストラされていく。
成果主義のスポーツ界が典型例であるが、経営危機と経営回復を繰り返せば、チーム内は若手選手が非常に多く、ベテラン選手が少ない構造となる。
年功序列の未来:若者が多く、年配者が少ない
一方、年功序列では、能力に関係なく年齢に応じて給与や待遇が上がる。
経営危機の際は、給与の高い年配者ほどリストラされていくため、経営危機と経営回復を繰り返せば、年配者が少なく若者が多い構造が生まれる。
しかし、(次で詳しく紹介するが、日本には解雇自由化の法律がないため、)純粋な年功序列制度を採用している企業は日本にほとんど存在しない。
年配者優遇の未来:社長以外は派遣社員
日本では解雇自由化の法律がないため、一度雇った労働者を簡単には解雇できない。
また、日本で年功序列がいまだに根強く残る理由で紹介したが、「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」の著者・城繁幸氏によれば、会社内では若者の立場は弱く、年配者ほど権力を持っている。
問題なのは経営危機の時だ。給与の高い年配者をリストラしないため、給与の安い若者をたくさんリストラすることになる。
経営が回復しても、簡単にクビにできる派遣社員などの非正規社員を大量に雇うことになり、正規社員は少ないままだ。
経営危機と経営回復を繰り返せば、社長以外は全員派遣社員という構造が生まれる。
日本は今後も年配者優遇の労働環境が続く
日本は年功序列でも成果主義でもない「年配者優遇の労働環境」である。
この年配者優遇の労働環境の始まりは高度経済成長時代であり、現代にも続く「簡単には解雇できない労働法」が生まれた。労働法により、労働者は定年まで雇用を保障される代わりに、企業は安い賃金で労働者を雇えるメリットがあった。
しかしバブルが崩壊すると労働法の問題点が浮き彫りとなる。企業は正社員を簡単に解雇できないため、法律上簡単に解雇できる非正規雇用が拡大した。
年配者優遇の労働環境では、若者が一生懸命働いても働いた分は年配の労働者に分配されるため、若者の給与や待遇は低い。さらに、経営危機の際は年齢の低い者ほどリストラされる。
そして足りなくなった労働を派遣などの非正規社員で補うため、日本では非正規雇用が年々増えている。
日本は世界的に見ても正社員の解雇が非常に難しい国のひとつであり、解雇自由化の法律を作らなければ、このまま日本は年配者優遇の労働環境が今後も続くでしょう。