高専の教員になる方法とその現状
高専生のあこがれ(?)といえば、高専の教員である。教員になる方法と、給与や待遇等のウラ事情も紹介する。
大学院を卒業すれば就職可能
まずは大学院を卒業する
高専の専門科目を担当する教員になるには、最低でも大学院の修士課程か博士課程を卒業する必要がある。なお、教員免許は不要だ。
私の在籍していた高専に、大学院を卒業していない教員が1名いたが、この教員だけ専攻科の授業を担当する権利がなかった。
技術士の資格だけで教員になる方法もあるが、大卒だと就職後の待遇に影響する可能性がある。
競争率が少なく、就職しやすい
高専の教員は、高専の卒業生というパターンが多い。
高専は知名度が低いせいか、一般的な大学の卒業生の志願者が少ないため競争率が少なく、元高専生が就職しやすい。
現状1:給与はやや高いが、不満だらけ
平均年収は764万円
高専機構では、教員の平均給与を公開(PDF)している。高専で勤務する各種職員の現状は以下の表のようになる。
区分 | 平均 年齢 |
年間平均給与額 | |||
---|---|---|---|---|---|
総額 | うち 所定内 |
うち 通勤手当 |
うち 賞与 |
||
事務・技術 | 42.2 才 |
533.1 万円 |
401.4 万円 |
8.8 万円 |
131.7 万円 |
教育職務 (高専教員) |
47.5 才 |
764.2 万円 |
564.5 万円 |
7.9 万円 |
199.7 万円 |
海事職種 (一) |
50.6 才 |
482.6 万円 |
508.9 万円 |
10.5 万円 |
173.7 万円 |
海事職種 (二) |
38.0 才 |
463.7 万円 |
351.9 万円 |
7.0 万円 |
111.8 万円 |
看護師 | 48.2 才 |
544.9 万円 |
408.9 万円 |
7.8 万円 |
136.0 万円 |
高専機構が公表している情報によると、高専で勤務する教員は平均年齢48歳で年収は764万円である。年収の詳しい内訳は月収46万円、通勤手当8万円、ボーナス200万円だ。
45~49歳の男性サラリーマンの平均年収が600万円ちょっとなので、世間的に見ると給与はやや高めである。(詳しくは高専受験計画-教員の平均年収は764万円へ)
給与へ不満を持っている
私が在籍した高専だけかもしれないが、専門科目担当の教員は給与に対して非常に不満を持っていた。特に学校に対して不満を持っていたのは年配の教員である。
教員いわく、たくさん働いても給料があまり伸びないようだ。授業中にも「こんな学校やめてやる!」と、学校の文句を行っている教員がたくさんいた。
(詳しくは高専受験計画-高専の教員は給料にご不満へ)
現状2:研究費が少ない
高専は研究費が少ない。
長岡高専の石田博樹氏は論文「高専問題の打開と展望[リンク切れ]」で教員について次のように述べている。
学問研究を本業とする者としてのまともな職務実績のある教官がほとんどいない。そもそも学問研究者としてまともに Career を積んだ上で採用となった教官がほとんどいない。士気を全く失った活気のない教官集団
私が在籍した高専でも、研究費が少ないという理由で1年で辞めた教員もいた。つまり研究目当てに教員になりたい人は、高専には向いていないでしょう。
(詳しくは高専受験計画-高専の教員は研究費にご不満へ)
現状3:超多忙
高専の教員は非常に忙しい。
長岡高専の石田博樹氏は先ほどの論文「高専問題の打開と展望[リンク切れ]」で次のように述べている。
授業時間に対する履修単位数の計算が大学の1/2となっているために,学生にとっては(教官にとっても)著しく過密なカリキュラムとなっている。
都立高専の古川純一氏も論文「高専教員と研究[リンク切れ]」で次のように述べている。
高専の教員は、大学の教員と比べて、圧倒的に「時間」がない。クラス担任、クラブ顧問などの学生指導に多くの時間を割かなければならない。
結論:給与はそこそこあるが、研究費は少なく超多忙
サラリーマンに比べれば、給与はやや高く安定しており、待遇は公務員並みの補償である。
しかし超多忙で研究する時間は少なく、予算も少ないので、研究心あふれる学者にとっては向いていない職業だ。